携帯小説に瀬戸内寂聴さんが挑戦
86歳の瀬戸内寂聴さんが初めて携帯小説を執筆しました。
携帯小説という新ジャンルに挑戦しようと決めたのは、
ケータイ小説大賞の名誉実行委員長を務めたことがきっかけだったようです。
携帯小説については、日本語をだめにするとか、
文学ではないとか、多くの批判を耳にしていたけれど、
読んでみたら売れている理由が分り、自分でも書けると思ったそうです。
「この年になると面白いことがなくなる。ケータイ小説を書くという初めての経験はとてもワクワクした」との瀬戸内さんのコメントを日本の新聞は伝えています。
瀬戸内寂聴さんは多数の著作を持ち、11世紀の恋愛物語「源氏物語」の翻訳者。
出版革命ともいわれる、携帯電話を使って少しずつ配信される短い小説に飛び乗ったというわけです。
この種の作品はベストセラー書籍になることも多いのだとか。
源氏物語の要素を織り込んでいて、ヒカルという名の少年がでてくるらしいです。
日本で最も有名な尼僧が86歳という年齢でケータイ小説を執筆することで、
新たな読者がふえそうです。
作品は「明日の虹」というタイトルで、
両親の離婚で心に傷を負った女子高生がヒカルという少年に恋をする話。
現在までに30作の携帯小説が書籍として出版されていて、
合計で1000万部が売れています。
携帯小説は主にテキストメッセージとして配信され、
読者は10代から20代の女性が多い。
瀬戸内さんが5月から最新作を掲載しているケータイ小説サイト「野いちご」は、
1日当たりの平均利用者数が5万人に上るということです。
ターゲットは若い読者ですが、
瀬戸内さんは自身の携帯小説にひそかに源氏物語の要素を織り込んでいます。
ヒカルは源氏物語の主人公の名前で、
瀬戸内さんのペンネーム「ぱーぷる」は、源氏物語の作者の「紫式部」にちなんでいるそうです。
また、瀬戸内はこの機会を利用して、源氏物語で目にした誤りを正そうとしています。
源氏は自身の罪を悔い改めていないと彼女は指摘していて、
悪いことをしたら、それを悔い改めなければならないとの思いから、
主人公ヒカルに
『悪いことをしたから幸せになってはいけない』
というセリフを言わせているそうです。
作家から尼僧になった瀬戸内さんは、
1973年に出家するまで波乱に富んだ人生を送っていました。
年下の男性との不倫の末に夫と子供を捨てて駆け落ちし、
その後妻帯者と長い間不倫関係にあったそうです。
しかし彼女は次第に文壇で名声を築き、
現代語訳により源氏物語の読者を広げることに成功し、
2006年に文化勲章を授与されました。
瀬戸内さんのケータイ小説は今月完結しました。
9月25日に書籍として出版されますが、この実験的試みは一度きりらしい。
「もう携帯小説は書きたくない」と彼女は日本の新聞に語ったそうです。